第一回全国うんこ例文コンテスト
6年生の部
うんこというものは、なかなか思い通りに「出る・出ない」をコントロールできないものです。うんこ例文を詠むにあたって、そういった悲哀をモチーフにすると、上手く行くことが多々あります。
例えば「うんこをもらす」というものが、まさにそれですね。思い通りにならない。ゆえに、時にはもらすこともあるわけです。
今回のらかさん(13)の例文は、そんなモチーフを扱ったうえで、さらにユニークな趣向が凝らしてあって目を引きました。
「もっと早く出て欲しかった」ということは、実際に出たうんこは望んでいたタイミングよりもかなり遅く、いわば「今ごろになって」出たわけですね。
もしかしたら、「何で今ここで」というタイミングで出てきた(=もらした)のかもしれません。
さり気ない言い回しですが、時系列を自在に行き来して表現する技術に、末恐ろしいものを感じます。
文の最後を名詞で終える「体言止め」の技術が使われています。
うんこ例文作りにおいて、体言止めの頻繁な使用はあまり推奨しないのですが、この例文は、体言止めによってなかなかおもしろい味わいが付与されていますね。
「黒板に向かってうんこを投げたい」といういかにも小学生男子的な発想と、「欲求」というやや難しげな語句の組み合わせに本例文の面白みがあるわけですから、体言止めにすることでさらにその「高尚っぽさ」に拍車をかけてあげることができる。
つまり体言止めを使う意味があるわけです。
また、このようなモラルや道徳的に危なっかしい内容を表現する時、体言止めにすることによって、その内容の「善し悪し」に言及せずに済むというメリットもあります。
いいですね。非常に上手く作られたうんこ例文です。
気づいていただきたいのは、単に「うんこを出すことを欲する。」だけで一つの例文とすることもできたはず。ということです。
しかしそこに「~と、父が言い出す。」というフレーズを追加している。これが技術その一です。
「うんこを出すことを欲する。」という文は、少し日本語として無理があり、かと言ってその無理なおかしみを楽しむにはやや弱い。
そこで、これを台詞とした。カギカッコの中に入れたわけです。
そんな台詞を言う、父の面白さに変えたわけですね。
そして「~と、父が言う。」ではなく「~と、父が言い出す。」であることにも着目してください。
これまでそんな口調ではなかったはずの父が、ある日、唐突にこんな台詞を「言い出した」。
言い出した、その瞬間に、シャッターを切ったわけです。これが技術その二です。
意味不明であり、不穏なシーンであると捉えることもできますが、例文作成者のモナカさんが十四歳の女子であることを考慮すると、そんな意味不明な発言をする父をモナカさんが「若干ウザがっている」様子が伝わってくる気もします。
そんな様子も含めて、このうんこ例文には、ほほえましい気持ちにさせていただきました。